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ハンセン病とは

ハンセン病は「らい菌」によって引き起こされる慢性の感染症。非常にゆっくりと進むが、診断の遅れなどにより治療をせずにいると抹消神経の麻痺や皮膚の病変などが起き、以前は顔や手足に後遺症が残ることもありました。しかし1941年にアメリカで開発された「プロミン」を皮切りにその後数多くの薬が開発され、今では早期診断と早期治療により後遺症を残すことなく完治するようになっています。

 

ハンセン病と偏見・差別

ハンセン病は人類の歴史上もっとも古くから知られ、恐れられてきた病気の一つです。効果的な治療法がなかった時代は患者の外見に現れる症状や、感染に対する恐れなどから、何世紀にもわたり世界中で業病、天刑、呪いなどと忌み嫌われ、患者たちは故郷を追われ、あるいは隔離されてきました。また、ハンセン病は遺伝すると誤って認識されていたことも偏見・差別を加速させました。

 

国による隔離政策

日本では明治時代以降、「文明国」になるためハンセン病患者を根絶することを目標に、「癩予防に関する件」(1907年)やその改正法である「癩予防法」(1931年)などの法律によって、治療よりも隔離を主目的とした政策が行われました。この「癩予防法」により日本中全てのハンセン病患者を療養所に隔離できるようになり、ハンセン病患者の人権が大きく侵害されました。患者は療養所からの外出を禁止される一方で、強制労働、堕胎・断種手術などを強いられました。職員の命令に従わない患者は監禁室に入れられるなど厳しく処罰されました。

 

無らい県運動

隔離政策の強化により世間に「おそろしい伝染病」との誤った認識が流布され、偏見・差別が助長されました。並行して、官民が一体となって患者を摘発し療養所に送り込む「無らい県運動」が展開され、地域住民自身がハンセン病患者の発見・追放・収容促進の役割を担いました。患者は療養所以外の居場所を失い、患者家族までもが地域から排除され差別を受け続けることになりました。

 

「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟・ハンセン病家族国家賠償請求訴訟

国際的には隔離政策が廃止される傾向となる中、日本では戦後、特効薬が開発されてもなお隔離を定めた「らい予防法」(1953年)が制定され、1996年に廃止されるまで長きにわたり隔離政策が続きました。これに対し、ハンセン病回復者たちは日本国憲法が定める基本的人権を侵害するものであったとして1998年、「らい予防法」違憲国家賠償訴訟を起こしました。この裁判は2001年に熊本地裁で原告勝訴となり、国の責任が認められました。また2019年には「家族訴訟」でも原告が勝訴し、隔離政策により家族への偏見差別が助長されたことと、家族関係が阻害された事が認められ、判決文では市民の責任も指摘されました。これらの裁判を経てもなお、原告である回復者・家族の方々の多くは実名を明かすことができず、親戚にすらハンセン病の罹患歴について明かすことができない状況が続いています。

 

ハンセン病療養所

日本国内には現在14箇所の療養所が存在し、入所者の平均年齢はおよそ86歳、多くの入所者の在所期間は60年を超えます。ハンセン病自体は治癒していますが、病気を隠そうと治療を受けるのが遅れたり、療養所での過酷な労働による二次障害を負ったりしたことが理由で、深刻な後遺症を抱えています。裁判の結果、社会復帰者への支援の仕組みが作られたにもかかわらず、いまだに入所されている回復者は全国で1094名(2020年5月1日現在)にのぼります。長年の隔離政策により社会や家族との繋がりを断たれ、高齢化も進み、社会復帰や経済的自立は困難な状態です。療養所で亡くなった方の多くは故郷のお墓に入る事が叶わぬまま、療養所内の納骨堂に納められています。

 

「らい病」から「ハンセン病」への病名変更

1996年「らい予防法」が廃止されたのに伴い、それまで歴史上差別的に使われてきた「癩」「らい」「らい病」という言葉は、回復者の願いによって、らい菌を発見したノルウェーのアルマウェル・ハンセン医師の名前をとって「ハンセン病」と病名が改められました。

 

【参考】

国立ハンセン病資料館 http://www.hansen-dis.jp/
日本財団 ハンセン病制圧活動サイト https://leprosy.jp/
厚生労働省 ハンセン病情報ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/
ハンセン病国賠弁護団 http://www.hansenkokubai.gr.jp/

映画のお供に…
石山さん夫妻の波乱万丈の人生がたっぷり語られています

ボンちゃんは 82歳、元気だよ!
– あるハンセン病回復者の物語り

石山春平著/社会評論社刊

四六判並製・224頁 定価=本体1700円+税
ISBN978-4-7845-2412-9 2018年10月刊

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